大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第二小法廷 昭和51年(行ツ)25号 判決

仙台市本町一丁目一〇番一二号

上告人

菅原光太郎

仙台市上杉一丁目一番一号

被上告人

仙台北税務署長 林一郎

右当事者間の仙台高等裁判所昭和四九年(行コ)第二号所得税更正請求却下決定取消等請求事件について、同裁判所が昭和五〇年一二月一八日言い渡した判決に対し、上告人から全部破棄を求める旨の上告の申立があった。よって、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告人の上告理由について

原審確定の事実関係のもとにおいては、上告人の本件更正の請求を不適法なものであるとした原審の判断は正当であって、原判決に所論の違法はない。論旨は、採用することができない。

よって、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 吉田豊 裁判官 岡原昌男 裁判官 大塚喜一郎 裁判官 本林譲 裁判官 栗本一夫)

(昭和五一年(行ツ)第二五号 上告人 菅原光太郎)

上告人の上告理由

原判決には本件更正請求書には所得税法(第一五二条、一五三条)に基づく特段の事由の記載が無いから本件更正請求の申立は国税通則法第二三条第一項に基づく請求と解する他ない旨判示している。

原判決には要旨として「請求の理由に所得税法(同第一五二条、同一五三条)所定の特例記載事項が無く記載の文言依りは昭和四一年中に生じたものとして同年分の所得計算上必要経費にすべきところ修正申告書に同年分の必要経費として更正請求の理由として居る事で有るから之は修正申告書の提出前に発生した問題で有るとして国税通則法に基づく請求と解する他無い旨」判示して居る。

右原判決にはこれは明らかに釈明義務を怠たり判断違脱審理不尽理由不備法令解釈の違法が有る。

上告人が昭和四三年十二月二八日被上告人に対し提出した更正の請求申立書には、

「昭和四三年十一月二八日御庁に対し申立人が提出した昭和四一年分所得税の修正申告書(所得金額参阡壱百六拾弐万参阡円)に記載した課税標準に左記の通り誤りが有ったので更正の請求をする」(乙第一号証参照)と明記して居るので有るから国税通則法に基づく更正の請求で無い事は一見して明らかで有る。

被上告人は昭和四四年四月二四日付にて右更正申立に対し却下決定を為し却下理由として

「請求書が法定の提出期限後に提出されている為です、更正の請求が出来るのは確定申告期限二ケ月以内なのであなたが提出した更正の請求書は該当しません」との理由にて却下している(甲第一号証参証)。

従って被上告人は本件更正請求申立期間は昭和四二年三月十五日依り同年五月十五日迄で上告人が申立てた更正請求は昭和四三年十二月二八日で有るから理由の如何を問わず内容の審査等一切考慮の余地が無いとの却下理由で有り理由の中に所得税法に基づく特段の事由記載が無いから却下する等理由の記載は無かった。

上告人が昭和四三年十二月二八日申立てた本件更正請求申立書には、前記乙第一号証記載の如く昭和四三年十一月二八日上告人が提出した昭和四一年度修正申告書に対して更正請求の申立をすると明記して居るので有るから当然所得税法に基づく更正請求の申立で有る事が確認出来た筈で有る。

被上告人は所得税法に基づく更正請求申立期間は昭和四三年十一月二八日以後二ケ月で有るので本件申立日同年十二月二八日依り更に一ケ月の余裕日時が有ったので有るから、若し所得税法に基づく記載漏れ等不備事項が有れば当然補充書の提出を求める事も充分可能で有ったのにも拘不、補充書の提出等釈明を求めず期間の経過を待って優位な立場に立たんと故意にして居る。

修正申告書を提出した後日で有る昭和四三年十二月中旬に至り同年十月下旬に昭和四一年度中に割引いた金額四阡四百万円の約束手形振出人仙台木材市場(株)の役員清野氏から安部惣十郎を通じ訴訟上の手形金請求が有れば右手形金を支払うとの話が有り回収出来得ると信じて居た。

然るに、同年十二月中旬頃に至り仙台地方検察庁検察官から右手形の偽造部分は没収されるもので有る旨告げられて、初めて右手形金四阡四百万円が回収不能で有る事が判明した後被上告人に対し上告人は、昭和四二年依り事業も廃止して居り昭和四二年度分以後の所得が少ないので幾等損失を認め無いと言われても困るので救済の方法を教えて呉れる様問合せても更正請求申立が有るが期間の経過に因り救済は不可能で有るとの返答で有ったが上告人はどうしても納得する事が出来ないから更正請求申立をするから不備な点が有れば補充書、又は口頭に依り釈明を改めてするから申立書の提出を受付けて呉れる様連絡の上送付したに拘不前記の如く適切なる行政指導を故意に怠たり期間の徒過を待って不利な立場に上告人を追い申立書の記載不備な点に対する補充書の追完等の提出及び釈明を求める事も無く申立内容の審理も成さずに却下決定を認めるならば納税法に無知な納税者に対する権利を蹂躪した国家権力の乱用で公序良俗に反する行為で有り許される可きで無いと思料する。

原審に於いて証人の不採用並に権利乱用に対する判断が無く乙第一号証(更正請求書)並に甲第一号証(却下決定書)の誤った判断が有るものと思料する。

原判決は被上告人の主張を支持して居るが民法第一条同第九十条の判示が無く所得税法第一五二条同一五三条国税通則法第二三条所得税法施行令第二七四条の解釈を誤った違法が有るものと云う可く右法令違反と共に理由不備審理不尽採証法則の法令解釈の違法が有りこの違反が無ければ第一審及び原審判決は当然に被上告人の請求を棄却さる可きもので有った。

従って原判決は破棄又は自判さる可きで有る。

以上

(添付書類省略)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例